この悲しみも。……きっといつかは消える
「ウィラードが後継者じゃないのは、足が不自由だったから、ですよね?」

「……」

「生まれながらですから勿論本人のせいではなく、母親のせいでもない。
 それなのに、どうしてメラニーは離縁されてしまったんです?」


 名指しされても、相変わらずのリチャードに。
 辛抱が切れたのは、今まで父親に反抗等したことがないカールトンだった。


「いい加減に話したらどうなんですか?
 貴方は肝心なことは何も話せない、ただ自分の都合で大声を出して、一族には家名で威圧するだけしか出来ない男なのか!」


 自分の父親に向かって、こんなに長く、強く。
 言葉を投げ付けるカールトンを見たのは、ミルドレッドもレナードも初めてだった。
 イアンからすれば、砂よりも脆い一枚岩が崩れ始めたのが見えた。



「あ、あのメラニーがっ、気が触れて!
 母上とスチュワートを殺そうとしたからだ!」


 息子からも責められたリチャードは、全てをメラニーのせいにすることにした。

 それでいい、あの時母グロリアもそうして、それを叫んで、それを押し通したのだから!


「あの出来損ないのウィラードを……
 産んだメラニーにはスチュワートは育てさせない……
 と決めた母上を、あの女は逆恨みして……」


 一生懸命に言葉を探しながら話すせいでたどたどしく、いつもより大きな声が出ないリチャードを、イアンは軽蔑の眼差しで見た。

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