この悲しみも。……きっといつかは消える
 さすがにこの姿を見せて、それを信じる者は誰もいないだろう。

 ミルドレッドも、レナードも、カールトンも。
 そして、マリーさえもが、今だけは心を同じくしていた。

 この男は嘘を吐いている、と。



 イアンから見て、ただひとりずっと表情が変わらないのは、膝に乗せたウィラードの娘メラニーを抱いているユリアナだけだ。
 彼女はリチャードの母グロリアと同じくバークレー家の出身だ。
 真相を知っているのかもしれない。



「では、殺そうとしてとは、どうやって?
 毒ですか? ナイフですか?」

「ち、違う!
 スチュワートを抱いた母上を、階段の上から突き落としたんだ!
 私はその現場を見たから、証言した!
 だが、母上は慰謝料無しで離縁で済ませてやった!
 出来損ないは絶対に高等学院には入学させないと、あの女の父親から一筆取って、それで勘弁してやったんだ!
 前当主夫人と次期当主の殺害をしようとした女を、だぞ!」



 ここだけは事実だから、大きな声が出た。


 リチャードはいつものように、周囲を睥睨しようとしたが、皆が冷めた目で自分を見ていた。

 
 
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