この悲しみも。……きっといつかは消える
「畏まりました、奥様がご命じになるなら。
 子爵様、わたくしの雇い主は奥様なのです」


 ユリアナは静かにそう答えて、一息入れ語り出した。



     ◇◇◇



 グロリアは息子のバーナードが、高等学院在学中に知り合ったメラニー・コーネル子爵令嬢を娶ることに反対だった、いや大反対した。


 ところが、普段なら彼女の主張をずっと通してきてくれていた当時の当主、夫のドナルドとバーナードは共に聞き入れてくれなかった。

 ふたりとも、このまま一族間の結婚を続けていけば、その血はどんどん濃く、濁り、澱んでしまう将来を憂いていて、それを彼女に諭すのだが、それをグロリアは受け入れなかった。
 アダムス一族の女達が、余所者の嫁にひれ伏す将来等考えたくもない、と。


「ですがやはり、グロリア様は当主夫人と言うだけ。
 ご当主と次期当主に、勝てるはずもなく。
 初めて敗北したのです」


 その後、嫁入りしてきたメラニーとは表面上は仲良くして。
 夫と息子の目を誤魔化してはいたが、影では実家から連れてきていた侍女達を使って、細かな嫌がらせをしていたと云う。


 やがてドナルドが亡くなり、バーナードが後を継いだが、グロリアは当主夫妻の部屋を出ることは了承したが、別邸に移ることは拒み、敷地内の離れに住み始めた。
 

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