この悲しみも。……きっといつかは消える
 別邸よりも大きさも内装も、全て劣ると言うのに。
 そのあからさまな行為はバーナードの神経を逆撫でしたが、一足先に結婚していたリチャードの子供の誕生を見届ければ別邸へ移ると言う母の言葉を信じた……
 自分の母だから信じたかったのだろう。


 メラニーは何も言わなかったが、義母が離れに移ってくれただけでも嬉しかった。
 そして、妊娠。
 彼女が後継者を身籠ったことで、母の態度も軟化したのか、専門の女医と産婆はこちらが用意すると申し出てくれたので、ここから新たに始められると、若い夫婦はグロリアを信じた。



「……その結果が、双子の長男の足が?」


 ユリアナに尋ねるレナードの声も不安げだ。
 この先を聞きたいのだが、聞くのも怖い。
 カールトンは、何故かここから立ち去ろうとするリチャードの腕を離さなかった。
 マリーはイアンに近付き、また身体をずらされて。


 ミルドレッドは、既に想像していたから彼等程の驚きは無かったが、何の感情も交えず淡々と話すユリアナに少しだけ恐れを感じた。
 彼女はバークレーの女性だから、父親からここまでの話を聞かされていた。
 彼女の父はグロリア様の甥だ。


 今更気付いたことだが、代々本家当主の妻を領内から選んでいたのなら、グロリア様は孫の嫁は自分の実家から娶りたかっただろう。
 血の濃さ等気にしないひとだったのなら。
 きっと王命が出るまで、幼い頃からユリアナは聞かされていたのだ。
 双子を産んだ場合、本家はどう処理をするのか。
 片方は手放すのだと覚悟しておけ、と。

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