この悲しみも。……きっといつかは消える
「おい、さっき叔父上は。
 その場に居て、証言したと言ったな?
 父上にはそう言えと、ばあさんに頼まれたのか!」

「使用人を全部入れ替えたのは、その真相を知っている人間が、伯父上やスチューにその事を教えないようにする為ですね!」


 レナードとカールトンから。
 今までは反抗ひとつしなかったふたりに責められて、リチャードは訳が分からなくなった。
 昔からそうだ。
 母から大声で責められ続けると、訳が分からなくなった。
 早く楽になりたくて、何でも言うことを聞いた。

 そんなにふたりで、俺を責めるな。 
 俺にうるさく、やいのやいの、言うな……
 うるさい、うるさいうるさいうるさい……


 ……母上、僕にうるさく言わないで……
 言う通りにします、言う通りにしますから……
 言う通りに、言う通りに言う通りに言う通りに……


 リチャードは、身体の中から何かが飛び出ていくような気がして、目を閉じて両耳を押さえた。
 もう聞きたくないのに、たくさんの人間が自分に、我も我もと訴えてくる。

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