この悲しみも。……きっといつかは消える
 何も話さなかった男は、話し出すと長く。
 その口調は少年に戻り、内容は暗い。


 この件に関してだけは、一族内でも本家とバークレー家のみが共有する過去だと思われた。



「……父が言うには、大怪我をされたジュリア様は直ぐに入院されて、頭も強く打たれていたそうで、事故前後の記憶が全くありませんでした。
 ですから何の抵抗もなく、この家に嫁がれたのだろう、と。
 奥様、これがわたくしが父から聞いた真相でございます」


 ユリアナがそう話を締め括ったが。


 もう誰も何も、言わなかった。
 結束力を誇るアダムスも、若い世代のレナード達には受け入れがたい話なのだろう。



 王都からバーナードが戻れなかった理由については、イアンは見当がついた。
 24年前なら、国王陛下の即位行事が続いたロイヤルウィークだ。
 自領の都合で帰れるはずがない。
 そのタイミングで、グロリアは動いたのだ。


 スチュワートが後継者となった理由、両親が離婚した理由、ウィラードが引き取られなかった理由が判明した。
 これでミルドレッドも、少しはすっきりするだろうか。


 グロリアからの連絡を受けたバークレーの動きは、何となく想像が付く。
 使用人達に多額の口止め料を支払って解雇したとは思えない。

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