この悲しみも。……きっといつかは消える
 振り返ると、サリー・グレイの手を掴んだメイドが立っていて、興奮していた。
 反対にサリーは、彼の顔を見るなり震え出した。


 何と言って、彼女はここへ連れてこられたのだろうか……
 あまり興味はないが。
 簡単なことなら、このメイドは使える。



「いいよ、聞かれても全然問題ないから。
 ……お前がサリー・グレイか。
 礼を言いたくて、ここまで来て貰った」


 最初メイドに向けた微笑みを消して。
 底冷えするような眼差しを、口では礼と言いながらサリーに向けたジャーヴィスだ。



     ◇◇◇



 「レナード様が呼んでいる」


 もう随分と彼とは時を過ごしていないサリーは、簡単にハンナに騙された。
 彼が待っていてくれていると、場所も聞かされずに足早に、連れてこられた。
 そこで待っていたのは、ウィンガム伯爵……ミルドレッドの兄だった。


 伯爵のことは2回、葬儀で見かけただけだ。
 ご領主様の葬儀は領民も参列出来るから、前伯爵様の時とスチュワート様の時だ。



 遠くからでは、ミルドレッドと面差しの似た女性的な感じの男性だと見えていたのに。
 こうして対峙してみると、女性的なところ等どこにもない。
 ただ怖さや冷酷さが滲み見えた。

 
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