この悲しみも。……きっといつかは消える
「そのことは、もうお気になさらないでくださいませ。
 奥様がご無事なら、もうそれだけで。
 それに申し訳ございません、奥様。
 お時間が無いのでございましょう?
 どちらへ行かれるのか、ご案内致しますので、先にそちらへ参りましょう」

「メラニーちゃんの部屋が見たいの。
 彼女の様子も詳しく教えて」


 ケイトはそれだけで頷くと廊下を先立ち、ローラ母子の部屋とされていた客室に、彼女を案内した。



 部屋の中には、マリーが購入した安価なドレスが散乱し、空気も少し澱んでいた。
 部屋の片隅には小さなチェストが置いてあり、その引き出しの一番下だけが、メラニーのスペースのようだった。


「……空気を入れ替えましょう。
 この部屋には誰も、掃除に入りたがらなくて。
 ご安心ください。
 こうなったのは、メラニー様がユリアナと眠るようになってからでございます」

「では、この部屋を現在使っているのは、マリーお義姉様とレナード様だけなのね……」


 ケイトは驚いた。
 確かにウィンガム伯爵からは、ローラの本名がマリーと言うことと、メラニーが旦那様の姪御様と言うことは教えられた。
 そして、これからはウィンガムの養女となったマリーがこのままこの邸に、レナードの正妻として暮らすのだ、と。



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