この悲しみも。……きっといつかは消える
 しかし、目の前で奥様が『マリーお義姉様』とローラを呼び、且つレナード様との関係もご存じだったとは思いもしなかった。


 
 ミルドレッドは、それからは何も言わず。
 部屋全体を見渡した後、引き出しからメラニーの小さな古ぼけたワンピースを取り出し、抱き締めていた。


 しばらくそのまま動かなかったが、その姿を見守っていたケイトに、ミルドレッドがようやく尋ねた。



「ユリアナとメラニーちゃんを。
 わたしが一緒に連れていってもいい?」

「……」

「わたし、あのふたりをウィンガムに連れて帰りたいの。
 メラニーちゃんを、この邸には置いておけない。
 証言をしてくれたユリアナをアダムスに残せば、ご実家に何をされるか分からない、だから。
 ……貴女にはまた迷惑をかけてしまう。
 けれど、お願いします、最後にもう一度だけ助けて」

「……」



 ミルドレッドはこれまでも、何度もケイトに助けられてきた。
 特に義母のジュリアが亡くなる前後は、本当に世話をかけた。


 領主夫妻の病が、領内でも猛威をふるいだした流行り病だと確定した頃。
 病床の父バーナードの指示で、両親を離れに移そうとしたスチュワートを止めたのが、ミルドレッドだった。


 どうしても生活を分けなくてはならないのなら。
 病気で弱ってしまったおふたりを動かすくらいなら、健康なわたし達が移動すべきだ、と。


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