この悲しみも。……きっといつかは消える
 その甘い考えは捨てろと、またリチャードから責められたスチュワートを支えてくれたのが、実際に家政を取り仕切ってくれていたハモンドとケイトだった。
 彼女達ふたりが素早く整えた使用人の配置により、2邸は決して交わることは無かったが、断絶することも無かった。


 理想を掲げるだけで、実は何も決められなかったミルドレッドを、ケイトはずっと支えて導いてくれた。



「わたくしでお役に立てるのであれば、何なりとお申し付けくださいませ。
 実は先程、別件で奥様の代理として……
 ウィンガム伯爵様から、ご指示を受けて動いておりました。
 旦那様と奥様が居なくなられてから、本当に久し振りにきちんとしたご指示を受けて、使用人一同、身の引き締まる思いを致しました。
 わたくしも若ければ、と……ユリアナを少し羨ましくも思いますけれど、あの子はこの家には相応しくありませんもの。
 メラニー様の世話をするあの子を見て、ずっと能力を隠されていたと知りました。
 あんなに仕事が出来るのなら、わたくしはもう少し楽をさせて貰えたのです。
 そこは恨んでいるからと、ユリアナに伝えていただけますか」
 
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