この悲しみも。……きっといつかは消える

第48話

 ミルドレッドがケイトの協力を得て、応接室に戻れば。

 部屋の中は、怒号が飛び交っているわけでは無かったが、一触即発の様相に見えた。
 ミルドレッドには、その理由が理解出来た。
 

 きっとマリー・マーチの嫁入りの条件に関して、アダムス側のふたりが納得出来ていないのだ。
 もう既に、リチャードは戦線を離脱している。




 今から思えば、どうしてあれ程リチャードを恐れていたのか、自分でも分からない。
 男性から大声を出されることに、慣れていなかったのもある。


 結婚披露宴で、隣にスチュワートが居なくなった時。
 近くに座っていた彼に「叔父様、今の御方はどなたでしょうか」と尋ねたら。
「分からなくても、分かった顔をしておけ!」と言われ、こんなひとは初めてだと用心したのもあった。
 それからは会うたびに緊張した。

 

「分からないことは、直ぐにその場で教えて貰いなさい。
 教えて貰うことは、恥ずかしいことではない。
 分からないままにしておくことの方が、愚かだ」

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