この悲しみも。……きっといつかは消える
 幼い頃から、父からはそう言われてきた。
 だから、分からないこと、知らないこと、不思議に思うこと。
 ミルドレッドは家族や家庭教師だけではなく、庭師やメイドや、領民達にも遠慮無く尋ねてきた。



 それを思い出すだけでも。
 愛するひとが居なくなってしまったこのレイウッドには、わたしはもう居られないと、ミルドレッドは強く思った。
 それで。


「もしかして問題は、マリーお義姉様の持参金についてでしょうか」

「それだけじゃない! マリーにはマーチの遺産が入らないようになっているらしいな?
 完全に肩書きだけの養子縁組じゃないか?」

「それのどこが問題なのです、カールトン様?
 お義姉様の相続放棄は、アダムスには関係の無いことではありませんか?
 レナード様との結婚後なら、分かりますけれど。
 今の時点で、アダムスに何の関係があるのでしょう。
 事前にお伝えしているだけでも、こちらは誠意をお見せしていますわ」


 ミルドレッドには強く出られないレナードを知っているので、代わりに話し出したカールトンに、ミルドレッドが言い返す。


 
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