この悲しみも。……きっといつかは消える
 マリーにしても、それは分かっていたことだったが。
 この場に、わたし本人が居るのに。
 誰もわたしを気にしてくれない。
 これは、わたしの結婚の話でしょう。
 どうして、誰もわたしを見ないの。
 今では、レナードさえこちらを見ない。


 それでも、ジャーヴィス様は結婚式まで守ってやると言ってくださった。
 これからは気を付けないと、何をされるか分からないから、と。
 必ず五体満足で結婚式を迎えられるように守ってやると、言ってくださったから。
 怖かったけど、言われたもの全部にサインをした。


 守る上に、披露宴の終わりには。
 別にお金もやると言ってくださったから。
 それは金貨30枚。
 平民なら贅沢しなければ、家族4人が5年暮らせる。
 それを御褒美にがんばるつもりだったのに。



「それでは兄様、わたくしのその持参金。
 マリーお義姉様にお使いくださいませ。
 それで、おふたりの結婚が纏まるのなら」


 静かにジャーヴィスに頼むミルドレッドを、マリーとリチャード以外の全員が見た。
 そんな簡単に譲れるような金額ではない。


 さすがのカールトンも、ミルドレッドと同額を求めているわけではない。
 アダムスも困窮している家ではない。
 ただ持参金も持たせて貰えない嫁等と、ごねて文句を付けたいだけだった。



「ミリー? 何を考えてる?」


 
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