この悲しみも。……きっといつかは消える
 皆を代表するように、一番彼女に尋ねやすく、また聞く権利を持つジャーヴィスが尋ねる。


「何も考えていません。
 もう考えたくないので、早く終わらせたいのです。
 メラニーちゃんをご覧ください、ユリアナだって限界です。
 これ以上、皆様が時間をかけてお話し合いをなさりたいのなら、お任せ致しますので。
 わたくし達3人は、お先にウィンガムへ戻ります」

「そうか、承知……」


 妹が初めて見せたその勢いに押されて、ついジャーヴィスが頷いたが、黙っていなかったのはレナードだ。


「駄目だ、駄目だ。
 ミリーは帰らせない。
 それに、ユリアナはうちの一族で、この家の使用人だ。
 勝手にウィンガムに連れて行く等……」

「先程、アダムス本家当主とユリアナ・バークレーとの雇用契約を解約致しました。
 わたくしはスチュワートの代理として、バークレー嬢を解雇致しました。
 それで、新たにマーチ家にて、メラニー・フェルドン嬢の養育係として雇用契約を結ぶ予定ですの。
 バークレー嬢、この申し出を受けて貰えるかしら?」


 そう言いながら、ミルドレッドは手にしていた書類をユリアナに手渡した。
 これをケイトに探して貰って、後はふたりでユリアナの誕生日を確認した。

 
 彼女がユリアナに渡したのは、アダムス家の使用人雇用契約書だ。

 それには大きく、『解雇』の印が押されていた。



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