この悲しみも。……きっといつかは消える
「お、おぉじちゃんは……さぁかすのひと?」

「サーカス? じゃないよ?
 普通の家だね」

「……めるの。
 めるの……ひだりのあし、きらない?
 ぱぱは……わるいことして……きられたの」


 いつの間にか、皆がメラニーとジャーヴィスの会話を聞いていた。
 この場のアダムスの男達は、それで3歳の幼児とは、たどたどしくても充分に、意思の疎通が図れることを知った。

 そしてその結果明らかになったのは、マリーがメラニーに足を切ると言って脅しをかけていた事実だ。
 それも父親が不自由だった左足を。


 皆がマリーの顔を、おぞましげに見ている。
 あのリチャードさえもが、複雑な顔をしていた。
 彼の中でまたひとつ、女性に対する恐れを増やしたのかもしれない。



「か、軽い冗談じゃないの。
 この子があんまり言うことを聞かなくて!
 それで仕方なく……」

「12枚」

 
 マリーに返事をしたのは、ジャーヴィスだけだ。
 他の者には、何のことだか分からない。
 だが、マリーには分かった。


 あの金貨30枚が、12枚になったのか。
 それとも12枚減らされて、18枚になったのか。
 そのどちらかしかない。

 皆がウィンガムへ帰ると言うから、一瞬自分も連れていって貰えるかと思った。
 ここへは結婚式で戻ればいいだけか、と。

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