この悲しみも。……きっといつかは消える
 だが、その希望も……もう無くなった。


 自分ひとりが残されるのだ、ここに。



     ◇◇◇



 未だにレナードだけが、足掻いている。


「メラニーはスチュワートの姪だ。
 アダムスの人間だよ、ミリー、俺とふたりで育てるのが筋じゃないか?」


「いいえ、レナード様。
 貴方のお手は煩わせません。
 メラニーちゃんの後見権利は、お義父様から旦那様、それからわたくしに移っています。
 ギャレット様、彼にウィラード様とお義父様との誓約書をお見せしてくださいませ」


 とうとう自分にも、当主夫人からご指名が入った!
 イアンが張り切って、持ち込んだ書類の中から例の誓約書を探しだして、レナードに渡した。


「ちゃんとご覧くださいね。
 ウィラード様は、アダムスとは関わらないと、はっきり明記しています」


 ミルドレッドはレナードにそれだけを言うと、今度は立ち上がったユリアナに向き合った。
 メラニーは既にジャーヴィスに抱かれて、ふたりで何かおしゃべりをしている。



「お願いがあるの、ドレッシングルームに旦那様からいただいたマッカートニーの長手袋があるわ。
 あれだけでいいから、持ってきて……」


 その最後まで自分をちゃんと見てくれない彼女に、レナードが声を荒げた。
 何度後悔しても、また同じことを繰り返すレナードは、本当はメラニーのこと等どうでも良くて、ただ引き留める理由にしたかっただけなので、誓約書もイアンに押し付ける。

< 187 / 229 >

この作品をシェア

pagetop