この悲しみも。……きっといつかは消える
第51話
イアンには、今でも忘れられない光景がある。
それは朝早い図書室での光景だ。
レポート提出日が間近に迫り、どうしても朝一番に確認したいことがあって、早起きして図書室へ向かった。
高等学院では、何故か図書室のみ施錠されることはなく、校舎が開かれている間は、始業前でも出入り自由となっていた。
そこで、噂のふたりを見た。
イアンは図書室で、向かい合わせて座り、時々視線や足先を絡ませ合うカップルは何度も見た。
同性愛者に対しての偏見はないつもりだったが。
その度に「ここでわざわざいちゃつくなら、早くどっか行ってヤれ」と、思っていたのに。
イアンは見てしまった。
『厳冬のヴィス』と『炎夏のフェルナン』
付き合っていると噂はあったけれど、誰もその現場を見たことがない。
ふたりが話している、笑っている、連れ立っている。
そんな姿を誰も見たことがない。
だから、噂だって「ガセだろう」が大半だったが。
ふたりが朝の図書室で、抱き合っていた訳じゃない。
ただ、並びの席に座っていただけだ。
それも間を3席空けて。
隣り合って、1冊の本を覗き合うわけでも、肩を触れあわせて居るのでもなく。
きっちり3席空けて、同じ方向に向かって座り、それぞれに本を読んでいた。
それは朝早い図書室での光景だ。
レポート提出日が間近に迫り、どうしても朝一番に確認したいことがあって、早起きして図書室へ向かった。
高等学院では、何故か図書室のみ施錠されることはなく、校舎が開かれている間は、始業前でも出入り自由となっていた。
そこで、噂のふたりを見た。
イアンは図書室で、向かい合わせて座り、時々視線や足先を絡ませ合うカップルは何度も見た。
同性愛者に対しての偏見はないつもりだったが。
その度に「ここでわざわざいちゃつくなら、早くどっか行ってヤれ」と、思っていたのに。
イアンは見てしまった。
『厳冬のヴィス』と『炎夏のフェルナン』
付き合っていると噂はあったけれど、誰もその現場を見たことがない。
ふたりが話している、笑っている、連れ立っている。
そんな姿を誰も見たことがない。
だから、噂だって「ガセだろう」が大半だったが。
ふたりが朝の図書室で、抱き合っていた訳じゃない。
ただ、並びの席に座っていただけだ。
それも間を3席空けて。
隣り合って、1冊の本を覗き合うわけでも、肩を触れあわせて居るのでもなく。
きっちり3席空けて、同じ方向に向かって座り、それぞれに本を読んでいた。