この悲しみも。……きっといつかは消える
 馬車に乗る時にはユリアナに渡すと思っていたのに、ジャーヴィスはそのままメラニーを乗せると「じゃあ後で」とミルドレッドに手を上げ、さっさと自らも乗り込んでしまった。
 つまり、次の休憩先までメラニーは預かると言うことだ。



「自分のことメルだって、可愛いな。
 俺はおぉじちゃま。
 おじちゃまより上、ってことかな」

「その通り、おじちゃまより上、おじいちゃまより下、だろうね」


 メラニーが本当に言いたいのは、そうではなくて。
『王子様』なのだが、ジャーヴィスもイアンも分かっていない。



 訳が分からないくらいにいつもとは違うジャーヴィスが、イアンは可笑しかったが。
 それと同時に、自分が席を外していた間に明らかにされた双子の両親の事情には全くの興味がないのか、ここにきても尋ねない……
 そんなジャーヴィスに歪な哀しさを感じてしまうのは、何故なんだろうとも思う。



「何処かで、メルの子供服は買えないかな。
 虹色の可愛い服を7枚、今日は買う。
 その中で、1番似合う色を明日は5枚追加して」

「親バカ通り越すのもご自由に、だけど。
 自分の子供は、考えない?」

「……」


 走る馬車の中。
 あの頃と同じ様に。
 聞いてはいけない質問をしたイアンを、同じ目でジャーヴィスが見たが、もうイアンは恐れていない。

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