この悲しみも。……きっといつかは消える
「フェルナンド公、結婚なんかしていないので」

「……」

「先月、あの国に仕事で行った。
 国内ではフェルナンド公妃は、例の幼馴染みの公爵令嬢じゃなくて。
 円満解消の後に、身分の低い女性と結婚したことになっていた。
 そのせいで、フェルナンド公は継承権を放棄、妻を公式の場に伴わない」

「……」

「調べたんだ、結婚の噂を流したのはフェルナンド公ご本人だ」

「……それを俺に教えても」

「……貴方達は、ふたりとも似ているんだなと思っただけだ」



 金髪緑の瞳の怜悧なジャーヴィス・マーチと。
 黒髪赤い瞳の情熱のフェルナンド・アパリシオ。


 ふたりの交流は、生徒会長が高貴な血筋の留学生の案内役になった2週間だけ。


 それ以降も一度くらいは、ふたりが楽しそうに話して、連れ立っている姿が見たかった。



 この先も離れたまま、ふたりの人生が平行していこうとも。

 いつか、ふたりの人生が交差しようとも。


「人生は短い。
 好きなように生きないと、先輩も」



     ◇◇◇



 もう1台の馬車には、同い年になった女性がふたり。

 大きなトランクは上ではなく、中に入れてくださいと、ユリアナが馭者に頼んでいた。

 
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