この悲しみも。……きっといつかは消える

第53話

 スチュワートが亡くなったその年の瀬。
 喪中だからと聖誕祭のお祝いは無かったけれど、ウィンガムでの新年に掛けての年越しに、イアンはジャーヴィスから招かれていた。


 家族や極親しい人物だけを招いての身内の集まりに、高まる期待と不安。


 マーチ兄妹の母上キャサリン様には、取り敢えずは嫌われていないと思う。
 早くも当主の秘蔵っ子に収まったメラニーにも、懐いて貰えた。
 後3年。
 来年からは叙爵に向けて、動き出すと決めていた。



 ユリアナが特別な夜の夜更かしを許されたメラニーを寝かしつけに行き、絵本を読む約束をしていたとジャーヴィスがふたりを追いかけ。
 キャサリンもが自室に辞した後。


 そんな中で、初めてミルドレッドと、ふたりきりになった時だった。




「わたし……スチュワートの名誉を挽回した後は、ギャレット様のお世話になりたいと思っていました」


 ミルドレッドの突然の告白に、イアンの息が止まった。
 お世話に? お世話に!? お世話になりたい!


「あんなに胸が踊る経験は、初めてでした。
 それで思ったんです。
 ギャレット様が生業とされている調査のお仕事?
 わたしも勉強がしたいと」


 
 ……あー、調査の、それでね……
 すっかり萎んでしまった心を叱咤して、イアンは余裕を見せた。

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