この悲しみも。……きっといつかは消える
 それはわたしが兄様の妹だからでしょうとは、いくら何でも逃げられない。
 ミルドレッドはそんな風に誤魔化せる程、何も知らない乙女でもないし、とぼけられる程、あざとくもない。


 しかし、これまでイアンはミルドレッドに対して恋愛的なことは何も言わなかったので。
 それをいいことに、イアンの前では彼の気持ちに気が付いていない振りをしている狡い女だったのも、事実だったりする。
 


「あいつは来年の叙爵を目指していて、昨年のシーズンから社交界で顔を売り始めた。
 指導役はエリン・マッカートニーで、私から見てもイアンは努力している」


「来年の叙爵ですか?
 ……どうしてギャレット様は、努力してまで貴族になろうとされているのでしょうか?」

「私が、ミリーは貴族にしか嫁がさないと言ったからだ」

「……」

「来年までの期限を決めたのも、私なんだ。
 だから、必ずイアンは2年以内に貴族になって、ミリーにプロポーズするだろう」

「では、ご本人じゃなくて、どうして兄様が2年も先に言うのですか!?」



 ジャーヴィスが少し変わっているのは、知っている。 
 だからと言って、本人より先にその話をするのは、どうなのか。
 
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