この悲しみも。……きっといつかは消える
 妹の視線と口調のニュアンスに、その無神経さを責める感じがあって、ジャーヴィスは内心たじろいだが、勿論それを表情に出すことはない。


愛した女性に散々尽くした挙げ句、いざ求婚すると待たされ、その結果玉砕していった男の恨み言を、あのイアンが言うはずもないだろうし、ミルドレッドだってそんな真似はしないと信じているけれど。



「分かるかい?イアンは本気なんだよ。
 男がこれまでの生き方を変えて、真剣に努力している。
 それを、その時になって『そんなこととは知りませんでした』『少し待ってくれませんか』とか、白々しく待たせた挙げ句に『やはり夫が忘れられません』なら、酷過ぎる」

「……そんなことは」

「だから、先に言っておく。
 あいつは決意して、3年かけて頑張っているんだ。
 ミリーもその分時間をかけて、真剣にこれからを考えて欲しい。
 それでもし、イアンに求婚されてもそんな気になれないのなら、下手に返事を長引かせず、その場できちんと断ってやってくれないか」



 とにかく、後から悔いが無いように。
 その時になってから、慌てないように。
 それまでにイアンのことを、ちゃんとその対象として見て。
 彼との将来も考えて。
 それでもやはり、心が動かないのなら、変に期待を抱かせず。
 すっぱりと振ってやって欲しい。

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