この悲しみも。……きっといつかは消える
「サリーと?
 平民の彼女に領主の妻が務まると?
 レイウッドの領民達がそれを認めると?
 お前は本気で言ってるのか?」

「……」

「本当にお前は馬鹿だな、だからスチュワートには言ったんだ。
 金はあるのに女子高等学院にも進学しなかった、家柄だけ、見た目だけで、頭の中は空っぽな女でいいのか、ってな」



 家柄だけ、見た目だけで、頭の中は空っぽな女。

 王都へ出ず、マナースクールに通ったわたしを、レナードはそんな目で見ていたの?
 もしかしたら、スチュワートも?
 それでもいいから、と?



「俺だって、スチュワートのお古のお前と結婚したい訳じゃない。
 だが、ウィンガムとの婚姻は王命だ。
 叔父上がお前を薦めたのは、お前が比較的早く身籠れる石女じゃないことを証明したからだ。
 それと領内で人気あることも一因だ。
 中途半端な貴族令嬢を娶っても、お前より好感度を上げるのは難しいからな」

「……」

「王家はウィンガムなら、誰でもいいんだよ。
 俺だってそうだ。
 お前とは子供をひとり作ったら、もう抱かないと決めている。
 そしてサリーをこの邸に住まわせる。
 俺の妻は彼女だけなんだからな。
 理解したなら、四の五の言わずに大人しくしてろ」


 それだけ言うと、レナードは立ち上がった。
 もう話すことはないと言いたげな彼を、気力を振り絞ってミルドレッドは見上げた。


「ウィンガムなら、誰でもいいんでしょう?
 スチューのお古のわたしが、本当はお嫌なんでしょう?」

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