この悲しみも。……きっといつかは消える
「……ああ、そうだ。
 ウィンガムで他に誰か居ると言うのか?」

「メ、メリーアンなら。
 メリーアンなら、まだ乙女で綺麗な子ですから」


 メリーアンはミルドレッドの再従姉妹で、まだ16歳の乙女だ。
 今は女子高等学院の2年生で成績もいい。
 それがレナードの好みなら、彼女の頭の中は空っぽじゃない。


 それにメリーアンは、披露宴で一緒にダンスをしたレナードが素敵だと言っていた。
 ミルドレッドを嫌っているレナードだって可憐なメリーアンになら、絆されるかもしれない。
 ……そう期待して、言ってみたが。


 メリーアンの名前を出すなり、レナードは笑い出した。
 今度は声をあげて。

 
 笑い続ける彼の気持ちが、ミルドレッドにはわからない。
 そんなにおかしなことを、自分は言ったのだろうか。



「はぁ、笑わせて貰ったよ。
 メリーアンか……確か16だったよな?
 サリーより10歳若い乙女だから、俺が絆されるとでも?」

「……そんなサリー様と比べた訳じゃ……」

「ここまで自分本位だと、反対に尊敬するよ。
 お前が地獄だと言ったこの婚姻の生贄に、可愛がっていたメリーアンを差し出すんだな?
 自分が逃れたいから」


 
 レナード様には、お付き合いしている恋人が居るのよ。


 ミルドレッドがそう教えると、残念そうに眉を下げたメリーアンを思い出した。


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