この悲しみも。……きっといつかは消える
 しかし、決してそのような心中を察せさせないように、敢えて冷たい表情をシールズはジャーヴィスに向けた。
 面会を求めてきたのは彼だ。
 自分からは話を振らない。



「お忙しいところ、何度も申し訳ありません。
 実は妹……レイウッド伯爵夫人のミルドレッド・アダムスに、会いました。
 新たに出された王命の話も聞きました。
 妹本人には秘密で事が進められた、とも聞きました」

「……」

「アダムス子爵からの請願書から、とも聞いております。
 レイウッドとウィンガムの政略がどれ程国益に叶うのかも承知しております。
 ですが妹は、自分はレナード・アダムスから憎まれていると申します。
 ウィンガムなら誰でもいいのだとアダムスは言ったそうですが、それでは代わりに生贄を差し出すことになるとも言われたようです」


 そこまで黙って聞いていたシールズだったが、それを聞いて初めて手を上げ、ジャーヴィスの話を遮った。


 ウィンガムなら誰でもいい?

 レナード・アダムスがそう言った?


 10日ほど前に叔父のアダムス子爵と訪れたレナードは、シールズからはミルドレッドとの再婚を喜んでいるように見えたのに?

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