この悲しみも。……きっといつかは消える
 あの、スチュワート・アダムスの遺体を見て失神したミルドレッドを、抱き止められなかった自分を責めていたレナードの姿を思い出す。


 急がせたくない、とレナードはシールズに語った。
 ゆっくり時間をかけたいと言ったのだ。


 既婚女性が再婚するには半年間の猶予が必要だ。
 前夫の子供を妊娠していないか、確認するためだ。
 スチュワートとの子を流してしまったミルドレッドにはその可能性は皆無だが、規定の期間は設けなくてはならない。


 1ヶ月以上床について居たミルドレッドが散歩に出掛けられるまでに回復した。
 レナードは、これからだと張り切っていただろう。

 伯爵位を継いでから徐々にミルドレッドとの距離を詰めていき、4ヶ月後には求婚する予定だったか。


 その予定が狂ってしまった。
 気持ちのすれ違いか、言葉の行き違いか。
 その両方か。


 きっかけは自分と妻の口の軽さで、レナードには本当に申し訳なかったと思うが。
 別れる予定だった恋人を愛人にして、妻と同居させるとまで口にしたのだ。
 多分、ミルドレッドとの修復は無理だ。


 21歳のレナードと20歳のミルドレッド。
 ふたりの相性は悪くは見えなかったが、若過ぎて。
 お互いがプライドを守ろうとして、自分から頭を下げることは出来ないだろう。


「最初言い過ぎたのは自分だった、と妹は反省していましたが、それでもアダムスからの言葉は許せないと言っていました」

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