この悲しみも。……きっといつかは消える
 許せないと言ったレナードの言葉が何なのかは、ミルドレッドは口にはしなかった。

 ただ、スチュワートが約束した養子縁組の話が無くなったので、急いで連絡を差し上げたのですと聞かされた。
 そして謝罪されたが。


 ジャーヴィスには予想がついた。
 レナードは、自分について、ミルドレッドを攻撃したのだ。
 きっと……思い当たるのはそのことしかない。


 養子のことは気にしなくていいと、ミルドレッドを慰めた。
 



「子供をたくさん産んで欲しいとミリーにお願いしました。
 義兄上も子育てに協力してください」


 結婚しないジャーヴィスに対して、我が子を養子に出すとはっきり言われなかったが、スチュワートはそう言ってくれた。
 彼はそんな人間だった。




「婚姻以外の方法を、探してもいいでしょうか?」

 
 ジャーヴィスは御伺いをたてる形で口にしたが。
 ウィンガムは婚姻以外の方法を4ヶ月以内に探すからな、と言われた気がした。


 さすが『厳冬のヴィス』だ。
 黙って流されるつもりはないようだ。

 
 だから、シールズは頷いた。
 自分はあれこれ手伝えないが。


「承知致しました。
 方法が見つかれば、私も後押しさせて貰いましょう」



 妻が先走ったことを、レナードに申し訳なく思っていても。
 それは、売り言葉に買い言葉だったのかもしれなくても。
 彼は不器用だとは呼べない、ただの愚か者だ。


 シールズは、妻公認で愛人を連れ込むと宣言したレナード・アダムスを、応援する気にはなれなかった。

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