この悲しみも。……きっといつかは消える

第13話

 門番も、元々はきちんと己の仕事をする男だったが。
 以前、身元を何度も確認したら、サリーの友人に対して失礼を働いたと、後からレナードから叱られた。
 それからは『あの女』の知り合いに対しては、誰何を行わなくなっていた。



 それで簡単に女は、アダムス邸内に入ってきて、応接室のソファに腰を下ろし。
 しばらくして入ってきたメイドにお茶を出して貰った。

 そして、女がメイドに言ったのは。


「伯爵様に会いに来たんだけど。
 ローラが来た、って伝えてちょうだい」



     ◇◇◇



 聞き間違いかと思って、ミルドレッドはケイトに聞き返した。
 

「……スチュワート様に会いたい、と?」

「左様でございます。
 ……伯爵様と言うので確認したところ、レナード様やサリー……様ではなく、スチュワート様だと言われたとハンナが申しております」



 今日はカールトンは、来ない日だ。
 彼女はスチュワートの執務室で、3年前の決算書に目を通していた。
 この年も大雨で、レイウッドは経済的に打撃を受けていたので、今年の収支の参考資料にしようと思ったからだ。
 

 ケイトが報告してきたのは。
 昼過ぎに応接室に通した、サリーの知り合いの女のことだ。
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