この悲しみも。……きっといつかは消える
 レナードとサリーはこの日、午前中から出掛けていて留守だったので、彼等が帰宅するまで応接室に放り込んだ親子だと言う。
 その風体から平民だと判断してサリーの知り合いだと思っていたのに、お茶とジュースを出したメイドに、女は伯爵様に会いに来たのだと話したらしい。



「旦那様が亡くなったことを、その女性はご存知なかったのね?」

「それが……ハンナがつい話してしまったようです。
 申し訳ありません」


 サリーの友人にお茶を出すのは、メイド達の中で一番年下のハンナが嫌々やらされていた。
 そんなハンナが話してしまったのは仕方がないので、自分は本人もケイトも叱る気はなかった。


 口にしてしまった言葉は戻らない。
 ケイトからきつく注意されて、ハンナは次からは気を付けるだろう。



「旦那様のお知り合いなら、わたしがお会いするわ。
 お名前は、お聞きしたの?」

「ローラ・フェルドンと仰いました、それと……
 こちらからは聞いていないのに、連れていた女の子はメラニーで3歳だと、自分から話したそうです」


 メラニー?
 どこかで聞いた名前だとミルドレッドは思い出そうとした。
 そして思い出した。

 スチュワートの実母の名前だ。
 家名はフェルドンではなかった気がするけれど。



「……わたしがひとりで対応しない方がいいわね。
 ハモンドに同席して欲しいと伝えて。
 ややこしい話になりそうなら、カールトン様にも連絡します」

「レナード様の行き先は分かっていますので、お知らせ致しますか?」

「あの方おひとりではないでしょう?
 もっと話がややこしくなるから、帰られた後にハモンドから伝えて貰えばいいわ」

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