この悲しみも。……きっといつかは消える
「王都からの乗合馬車は本当に窮屈でした。
 この子も可哀想に疲れてしまいました。
 あの、直ぐには返事は無理ですよね。
 だったら、何処か休めるホテルとか紹介してくださいな。
 当然、泊まりや食事の費用は伯爵家のお支払でね?」


 そう言いながら、自分が持ち込んだ古ぼけたトランクを指差した。


「長期戦になるだろうと覚悟の上ですから、荷物も多くなっちゃって。
 結構重いんですよ」


 貴女の荷物が多かろうが、重かろうが。
 わたしには関係ない!と叫びたかった。
 しかし、我慢した。


 その代わりに、ミルドレッドの口から出た言葉は。


「貴女の娘さんが、夫の子供だと言う証はありますか?」だった。



     ◇◇◇



 そう言われたローラが少しだが、動揺したように見えたので。
 これはもしかしたらと、ミルドレッドは続けた。


「失礼ですが、その証を見せていただかないと。
 亡くなったスチュワートはもう、わたくしに事情を話すことは出来ないのですから。
 例えば、貴女が誰かから夫が亡くなったことを聞いて、これはお金になる、と思ったのかもしれないでしょう?」

「わたしが嘘をついて、騙してるって言うの!」

「その可能性を考えただけです。
 ……1年に何回、夫は貴女と娘さんに会いに王都へ行ったのかしら?と不思議ですし」

「何度も来たわ!」

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