この悲しみも。……きっといつかは消える
「だから、その日付と回数、彼が渡していたと仰る金額と。
 夫が家賃を出していたお家の、貸し主のお名前も教えていただけます?
 賃貸契約書の写しを見せていただきたいわ、借り主が誰なのか。
 残念ながら、未婚の女性とは契約しない家主さんも居ると、聞きますもの。
 スチュワートが年間いくら渡していたのか知らなければ、貴女達親子への援助は無理です」

「これだからっ!
 あんたは貴族で、いっぱいお金を持ってるんでしょう?
 どうして、それくらいを出し渋るのよ!」



 もう6ヶ月なのにお腹が目立たないと言われた。
 ミルドレッドの子供が妊娠4ヶ月目でスチュワートと同じ日に亡くなったことを、ローラが知らなかったのは当たり前だ。
 それでも、その言葉の威力は絶大な効果をミルドレッドにもたらした。


 もし、この女が嘘をついているのなら。
 平民が貴族を騙そうとした罪がどれ程重いのか、思い知らせてやりたい。
 


 ローラの娘の名前がメラニーであること。
 彼女がスチュワートから、母の名前を教えられない限り。
 または、彼が母の名前を娘に名付けない限り。
 メラニーと言う名前にはならないことを、ミルドレッドは失念していた。

 
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