この悲しみも。……きっといつかは消える
「ですから、それくらいと仰る金額を教えていただかないと。
 後はそうそう、メラニー嬢をお産みになった産院の名前も教えて欲しいんです。
 3年前くらいなら出産記録も、当時働いていた方達の記憶も残っていらっしゃるでしょうから。
 調査させれば、すぐに判明致します。
 援助するのはその全てを確認してから、のお話になりますけれど?」

「そんなのっ!
 いちいち全部って……」

「実は、先程まで3年前の決算書に目を通しておりました。
 その年は領内で大雨被害があって、当時は次期領主だった夫がそれを放り出して、貴女に会う為に何回も王都へ通ったとは……」



 そうだった、思い出した。
 3年前のスチュワートは、とても忙しくしていた。
 手紙は何通もやり取りしたけれど、そんなに会えていなかった。



 面白いくらいに慌てて騒ぎ出したローラを、更に問い詰めようとミルドレッドが前のめりになった途端。

 周囲の騒がしさにメラニーが、目を覚ました。
 そして見上げた母の顔が怒りに歪んでいるの見て、怯えたのか。
 火が着いたように、泣き出した。


 小さな子供の泣き声は、失ってしまったものを思い出させて、ミルドレッドは我に返った。


「……また後で戻ります。
 わたくし達は一旦席を外しますから、貴女は娘さんを泣き止ませてください」


 ミルドレッドは立ち上がって、応接室を出た。


 
< 46 / 229 >

この作品をシェア

pagetop