この悲しみも。……きっといつかは消える
 ユリアナを伴い、3人で当主夫人の私室に戻ると、ケイトが取り出してきたのが喪服のような黒いドレスなので、それを着ないとミルドレッドは拒んだ。



「旦那様がわたしに一番似合っていて、一番好きだと仰ってくれた薄いピンクのデイドレスを着ます」

「……お気持ちは分かりますが……もうすぐアダムス子爵様もこちらへ来られます。
 あの方には奥様のお気持ちは分かりませんし、分かろうともなさりません。
 黒がお嫌だと仰せになられるのなら。
 せめて、こちらを」

 
 そう言って代わりに彼女が差し出したのは、灰色に青が混じった、手持ちのドレスの中ではシンプルなデザインで、地味なものだ。
  
 このドレスを着ると、色白のミルドレッドの顔色が明るく見えないなとスチュワートが言ったので、その一度きりしか着ていない。


 顔色が悪く見えるではなく、明るく見えないと。
 スチュワートはそんな言い方をしてくれるひとだ。


「彼はそんなひとだった」なんて、まだ過去形では言いたくない。


 だから、彼が「ミリー、心配かけてごめん」と帰ってきてくれると信じて、彼が好きだと褒めてくれたドレスで迎えたかった。


 
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