この悲しみも。……きっといつかは消える
「……」

「だったら、はっきりするまで。
 ここで、ふたりを世話した方が良いと思ったのよ。
 頭が空っぽの馬鹿な女の浅知恵だった?」


 腹を立てたとは言え、ミルドレッドに「馬鹿だ」「お前は頭が空っぽ」と言ったのは、レナードだ。
 それを冷静に返されて、彼は勢いを失った。



「じゃ、じゃあ、どうして君はそんな格好してるんだ?」

「この家を出るの。
 スチュワートの子供と同じ家には、1日だって居られない」

「どうしてだ!
 君が出て行く必要はない!」

「……わたしが耐えられないから、それだけよ」



 君はサリーがここに居ることを受け入れていたじゃないか。
 どうして、スチュワートのことなら耐えられないんだ。


 レナードはその言葉を飲み込んだ。
 その答えは分かっている。
 それを問えば、自分が傷付くだけだ。


「……分かった。
 落ち着いたらウィンガムに迎えをやるから、戻ってこい。
 だが今日は駄目だ、もう日が暮れる。
 馬車を出すから、帰るのは明日の朝にしてくれ。
 夜の移動は危険なんだ、許さない」


 それだけ言うと、レナードはサリーには目もくれずに出ていった。
 その後ろ姿を見送って、サリーがミルドレッドに近付いてきた。


「ミルドレッド様、今どんなご気分かしら?」

「……楽しそうに見えますか?」


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