この悲しみも。……きっといつかは消える

第18話

 時は夕暮れから夜へと移り。
 侍女のユリアナを理由を作って部屋から出したミルドレッドは、密かに部屋を出て邸の裏門へと向かった。

 そこには既にサリーが立っていて、彼女の姿を認めると、小さく手招きをした。


「遅いじゃない、もう外で待機してるのよ」

「ユリアナが側から離れなくて。
 食欲が無いから貴女特製のスープを作って欲しいと頼んだの」

「特製スープを作れなんて命令出来るの、良いご身分ねぇ」


 まだサリーには、専属の侍女は付いていない。
 自分が居なくなれば、それはユリアナかもしれないし、他の誰かになるのかもしれない。
 無責任だと責められようとも、もうそれはミルドレッドには関係がない。
 ここへはもう戻らないとサリーに言ったのだ。
 口にしてしまった言葉は戻らない。


 ミルドレッドは出てきた邸を振り返ると、心の中で頭を下げた。
 そして上から羽織っていたマントの首元を合わせ、足早に裏門を通り抜けようとして。

 サリーに腕を取られた。
 夜の闇の暗さに慣れ始めたミルドレッドの目には、彼女が笑っているのが分かる。
 

「結局、ミルドレッド様って後から来た女なのよねぇ」

「……何?」


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