この悲しみも。……きっといつかは消える
 その後寝息をたて始めたミルドレッドを抱き、嫁入り前のままの状態の彼女の部屋まで移動した。
 妹をベッドに寝かせて部屋を出ると、母が立っていた。


「さっきの……貴方はどう思ったの?」

「詳しい話は、ミリーが起きてからしか分からないので。
 ただ信じられないとしか」

「わたしもよ、あのスチュワートに限って……
 あんなにミリーに優しかったのよ、騙していたとは思えないわ」

「何人も同時に愛せる男は、大勢いますよ」


 スチュワートがそのタイプの男とは思えなかったが、ジャーヴィスは敢えてそう言った。
 母がどうしてそれほど、スチュワートのことを信じようとしているのか、聞き出せそうな気がしたからだ。


「彼にそっくりな娘……3歳ですって?」

「レナードからの手紙には、そう書いていましたね」

「彼が王都までよく会いに来ていたと、その女が言っているのよね?
 それが信じられないの……
 スチュワートは妊娠したミリーをどう扱えば良いのか、全然知らなかったのよ」

「母上は、彼と何か話していたのですか?」

「ミリーは妊娠して、夜以外でも時間関係なしに良く眠るようになったの。
 それは妊娠初期特有の症状なんだけれど。
 彼はそれを知らなくて、余りにもミリーが寝るから心配になって、彼女は以前から良く眠っていましたかと馬を飛ばして、わたしに尋ねて来たのよ。
 それで説明して、出産間近になると反対に妊婦は眠れなくなるから、今の間に出来る限り寝かせてあげて、と教えたら」

< 59 / 229 >

この作品をシェア

pagetop