この悲しみも。……きっといつかは消える
「あぁ、それで……彼はいつもミリーを休ませようとしてましたね、過保護なくらいに」


 ミリーが妊娠した頃に、スチュワートがひとりでウィンガムに顔を出したことは初耳だった。
 


「同居していたジュリア様は亡くなっていらしたから、他に聞く女性も居なくて、ここまで来たのよ。
 先にお子様が誕生されていたカールトン様には、ミリーの身体についての話はしたくなかったと、言っていたわ。
 それって、すごい独占欲だと微笑ましかった……
 つまり彼の身近には、ミリーが身籠るまで妊婦は居なかった、じゃないかしら?」

「その女が主張するように、今でもよく会いに行っていたのなら、妊娠中の女の世話もしていただろうし。
 心配はしなくてもいいと、知っていたはずですね」

「それに、可愛がっていたと言う娘に付けた名前が、実母から取ったメラニーでしょう?
 彼は継母のジュリア様のことを、実の母のように慕っていたわ。
 だとしたら、ミリーにも娘が生まれたらジュリアと名付けても不思議じゃないのに、彼にはそのつもりはなかったの。
 男児だったら、アダムスの代々の名前を付けなくてはならないけれど。
 女児だったら、ミリーが好きな花の名前を付けたいと言っていた。
 あの子に内緒にして驚かせたいと、わたしに花の名前を聞いてきたのよ」

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