この悲しみも。……きっといつかは消える

第20話

 サリー・グレイは、初めてレナードに怒鳴られた。

 今から4年前の夏祭りの夜。
 17歳のレナードの初めての相手をした時から、5歳年下の彼は彼女の思うように扱えていたのに。


「お前が、ミリーを逃がしたのは分かってるんだ!」

「何のことを言ってるのか、わからない……」


 ミルドレッドが、夫の娘を連れた愛人の出現にショックを受けてアダムス邸から逃げ出した夜のことを、レナードは責めている。




 あの日、レナードとふたりして外出から戻ると、家令がレナードを掴まえて、何やら彼に話していた。
 その男はふたりが何をしていても関わっては来ないので、珍しいなと思っていたら、物凄い勢いでレナードが2階へ駆け上がって行ったので。
 慌ててサリーもその後に続いたら、彼は何と大嫌いなミルドレッドの部屋を訪れたのだ。

 後ろから来るサリーには、気付いてもいないのか、必死になってノックしていて。
 やがてドアを開けたミルドレッドに招かれて入室したので、焦って後に続いた。
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