この悲しみも。……きっといつかは消える
     ◇◇◇



 サリーはミルドレッドと初めて会った時から気にくわない女だと思っていた。

 初めて招かれたレナードの家。
 レイウッド領主のアダムス邸は、別世界だった。
 そこで会った、レナードの家族とあの女。

「来年お嫁に来ます。どうぞよろしくお願いいたします、サリー様」と平民のサリーに貴族令嬢が様を付けて挨拶をした。
 

 わたしが自分より6つも年上だと嗤っている?
 ミルドレッドのサリーに対する丁寧な対応。
 その笑顔は貴族特有の嫌味にさえ受け取れた。


 家族に向けるレナードの顔は、普段の彼とは違って見えて、グレイズプレイスに送って貰う馬車の中で彼に甘えた。


「ねぇ、わたしはあの……ミルドレッド様?
 余り好きじゃない、レンは?」

「……俺もだよ」
 


 翌年、スチュワートとミルドレッドが結婚した。
 するとそれまで、どんなに誘っても、夜遅くなっても、帰宅していたレナードが週に2日、サリーの家に泊まるようになった。
 

 彼が領主様の息子だから。
 彼よりも5つも年上だから。
 いつかは別れを告げられるだろうと諦めていたのに、プロポーズもされた。
 後は、その日を待つばかりだったのに。


 領主になって1年も経たない内に、スチュワートが亡くなった。
 その日からレナードは顔を見せなくなった。


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