この悲しみも。……きっといつかは消える
 その判断は間違っていなかった。
 2ヶ月後、何とレナードが邸で一緒に住もうと迎えに来てくれたからだ。


 期待と夢に胸を膨らませて、アダムス邸に乗り込んだサリーだったが、まだミルドレッドが大きな顔をして居た。



「ねぇ、ミルドレッド様はウィンガムに帰らないの?」
 
「……さぁね」

 
 ミルドレッドの姿が見えると、いつもより優しくなるレナードも、サリーの問いにはっきりと答えてくれない。

 そして、サリーは聞かされた。
 少し調子に乗っていた彼女にそれを教えたのは、ハンナと言うメイドだ。


「わたし達にあれこれ偉そうに命令しないでください!
 ここの奥様は、ずっとミルドレッド様なんです!
 新しい領主様と再婚なさると聞いています。
 いくら貴女が……」


 ハンナが言えたのは、そこまでだった。
 何故なら、サリーに平手打ちされたからだ。
 しかし、その場から逃げ出したのは、打たれたハンナではなく、打ったサリーだった。



     ◇◇◇



 平民の自分が、貴族のミルドレッドに勝てるわけがない。 
 何も言わないレナードに、はっきりして、なんて言えるはずもない。


 だが、これは。
 サリーは楽しくて仕方がなかった。 
 大嫌いな女を追っ払えるチャンスは今しかない。

 
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