この悲しみも。……きっといつかは消える

第22話

「つまりは、この件が解決しても、レイウッドには戻りたくない?」

「そうです、二度と戻りません。
 サリーからもその条件で、馬車を用意して貰ったんです」



 なるほど……レナードの恋人サリー・グレイの協力があったから、当日に出奔出来たのか。
 お嬢様育ちの妹にしては段取りが早過ぎて、そこだけが疑問だった。


「わたしはアダムスにとって……疫病神だと。
 レナードは殺さないでと言われました。
 来て2年も経たずに家族から4人も死人が出たんですから。
 彼女がそう思うように、同様に考えているひとはレイウッド領内には何人も居るでしょう」



 ウィンガム領主の妹を、平民の女が疫病神だと罵ったか。
 お望み通りレナードの代わりに消してやろうかと、ジャーヴィスがその綺麗な顔に出さずに考えていると、言われた本人から釘を刺された。 


「サリーのことなんて無視してください。
 彼女のお陰で、あの家から出られたのです。
 これ以上わたしに関わった人物から死人は出せません」


「……そんなことは考えていないよ。
 ミリーこそ、疫病神なんて無視すればいい。
 自死を偽装する云々は、まだ先延ばしにしてくれ。
 私はこれから王都へ行き、この件について調べる。
 その結果を待ってからでも遅くはないだろう?」

「調べるのは、あの子供のことですか?」

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