この悲しみも。……きっといつかは消える
「いいよ、気付いたことを話してごらん」

「……あの家門で一番最近の出産は、カールトン様のお子様のクライン君です。
 クラインは名鑑で遡れば、ふたり位しか居なくて。
 男子にはご先祖と同じ名前を付けることが決められているアダムス一族では、珍しい名前なんです。
 ですが、3代前のスチュワートの曽祖父のエルネスト様の兄にウィラードと言う方が居て。
 このウィラードは一族では長男によく付けられている名前ですが、その方以降は誰もいません。
 順当に考えれば、クライン君がウィラードと名付けられていても不思議じゃないのに」

「本家のスチュワートの息子の為に、その名前を付けるのをカールトン卿は止めたのかも知れないね」

「名鑑に掲載されている享年年度から見て、長男のウィラード様は20代で戦死されていて、短命だったのを不吉と捉えられたのかもしれませんが」



 一旦、ここでミルドレッドは話すのを止め、テーブルに置いていたチーフの下から折り畳まれた紙を取り出した。



「慌てて荷造りしたので、ベッドサイドテーブルに置いていたスチュワートの本も入れてきてしまって。
 間からスチュワートが書いた、このメモを見つけました」


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