この悲しみも。……きっといつかは消える

第23話

 ジャーヴィスはミルドレッドから渡されたメモに目を通し、キャサリンに回した。
 それを読んで、母が目元にナプキンを当てるのを見た。


「彼が生まれてくる子供の為に考えてくれていた名前です。
 男児の5つの候補の中には、アダムスが長男に付けることが多いのに、最近居ないウィラードの名前はありません。
 これは兄様が仰っていた本家のスチュワートの子供の為に取っていた、は違っていたのです。
 それに女の子の名前の候補は、ジュリア様や名鑑に載っていた先祖代々の女性の名前は無くて、全てわたしが好きな花の名前でした。
 ……彼は自分の母親の名前を、娘に付けるひとではなかったような気がするんです。
 それだけで、あの子をメラニーと名付けたのはスチュワートではないと信じたいわたしは、愚かでしょうか?」

「……」

「いいえ!いいえ!」


 ジャーヴィスが答えるよりも早く、声をあげたのはキャサリンだ。


「スチュワートは女の子なら、ミリーが好きな花の名前を付けたいと言って……
 ウィロー以外は、わたしが彼に教えたの」

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