この悲しみも。……きっといつかは消える

第25話

 マーチ家王都邸のコンサバトリーは、この季節の午後からの時間は穏やかで暖かな、秋の陽射しが差し込む。


 ミルドレッドは、ほぼ初対面のイアン・ギャレットを相手に、自分の考えを述べた。
 彼から訪ねてきたのに、まだその用件を言ってもいないイアンに向かって。



「双子でなければ、年子……でもその可能性は低いですね。
 当時の出産は今よりもっと女性にとっては命懸けだったでしょうし。
 ならば、おふたりの母親が違う可能性ですが。
 結婚前に夫から、アダムスでは愛人を設けていた当主は何代か前からは居ないと、聞いていたんです。
 曽祖父なら、何代か前には含まれるような気が致します。
 それを信じると、おふたりは双子だろうと考えたんですが。
 間違っているでしょうか?」

「いえ、私もそのように読み取りました。
 ご主人が夫人に語られたように、愛人の居た当主が最近は居なかったのだとしたら、3代前は正妻が産んだ双子で間違いないでしょう。
 では、もうひとつ。
 アダムス家のご先祖を呼び捨てにするのはご容赦下さい。 
 ウィラードが早世した理由を、夫人はお分かりになりますか?」

「享年から見て、先の戦争で戦死されたのかと思いました」

「2年戦争は彼が亡くなる前年度に、我が国の勝利で終結しています」


 この国では過去の戦争を、その戦いの期間で名付けていた。
 2年戦争を先の戦争と呼ぶのは、それ以降は国境等で地域的に小競り合いはあっても、国をあげての戦争にはなっていないからだ。
 
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