この悲しみも。……きっといつかは消える
レナードは新聞社に勤めるスチュワートの異母弟だ。
週に2日は、恋人のサリー・グレイの父が経営するホテル、グレイズプレイスに泊まっていた。
そして昨夜はその日だったので、ミルドレッドはサリーと共に居る彼に連絡するように、ハモンドに頼んでいた。
◇◇◇
最悪な気分のまま喪服に着替え、応接室に戻ると。
異母弟のレナードは帰宅していたが、シールズ査察官はまだ到着していなかった。
緊急時と言うことで、いつも身嗜みは完璧なレナードも取り敢えずといった風で、雨に濡れた髪もそのままに、ソファから立ち上がると。
義姉のミルドレッドを抱き締めた。
「ミリー、大丈夫、大丈夫だから」
「……お帰りなさい、レナード様……わたし……」
「もう大丈夫、俺が付いてる」
異母弟だが、半分血が繋がっているレナードの声は、スチュワートの声とそっくりだ。
その声で「大丈夫」と繰り返されて。
まるでスチュワートから言われたかのように思えて、ミルドレッドは初めて泣いた。
恋人の元から帰宅した義弟に対して言った「お帰りなさい」が、夫に言えたような気がした。
週に2日は、恋人のサリー・グレイの父が経営するホテル、グレイズプレイスに泊まっていた。
そして昨夜はその日だったので、ミルドレッドはサリーと共に居る彼に連絡するように、ハモンドに頼んでいた。
◇◇◇
最悪な気分のまま喪服に着替え、応接室に戻ると。
異母弟のレナードは帰宅していたが、シールズ査察官はまだ到着していなかった。
緊急時と言うことで、いつも身嗜みは完璧なレナードも取り敢えずといった風で、雨に濡れた髪もそのままに、ソファから立ち上がると。
義姉のミルドレッドを抱き締めた。
「ミリー、大丈夫、大丈夫だから」
「……お帰りなさい、レナード様……わたし……」
「もう大丈夫、俺が付いてる」
異母弟だが、半分血が繋がっているレナードの声は、スチュワートの声とそっくりだ。
その声で「大丈夫」と繰り返されて。
まるでスチュワートから言われたかのように思えて、ミルドレッドは初めて泣いた。
恋人の元から帰宅した義弟に対して言った「お帰りなさい」が、夫に言えたような気がした。