この悲しみも。……きっといつかは消える
 来ない方がいいと言ったジャーヴィスに無理を言って、連れてきて貰ったのは自分だと、ミルドレッドは思い出した。


 これを午後の来訪時に、ギャレットから確認されたのだ。
 スチュワートが抱えていたものを、知る覚悟はあるのかと。

 


「わかった、では続けよう。
 多分、王都に居た高等学院時代にスチュワートは兄と再会した。
 偶然になんて現実には有り得ないから、母親の実家を尋ねて行ったのかもしれない。
 それからは誰にも言わずに、兄と交流していた。
 彼は、本来なら後継者であった兄に罪悪感を覚えていて、『伯爵家の娘だと要求しないこと』を条件に、彼の妻と娘の援助をしたんだ。
 家賃と生活費の援助と言うことは、兄はもう家族の面倒を見られなくなっている。
 彼が何処にいるのか、無事なのか、亡くなっているのか。
 母親のメラニー・コーラルはどうしているのか。
 そのふたつをギャレットに調べて欲しいと頼んでいた」



     ◇◇◇



 イアンがジャーヴィスの依頼を受けて、コーラル家を調べたところ、メラニーの実家は邸を手放していて、そこには違う家族が住んでいた。

 メラニーがバーナード・アダムスと離縁して実家に出戻った年には彼女の父は存命で、確かに娘が赤ん坊を連れて帰ってきたと言う話は、隣の邸の使用人から聞けた。 

 だが、その父親が亡くなり、メラニーの兄が後を継いだ後に、コーラル家は困窮し、メラニー母子が何処へ行ったかは不明だった。

 
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