この悲しみも。……きっといつかは消える
「ローラが名乗ったフェルドンは、貴族相手に高利で金を貸し付ける金貸し業を営んでいた平民で、恐らくメラニーは兄が作った借金のせいで、フェルドンに売られたか、と。
 ただ、このフェルドン金融も今はもう無い」

「フェルドンは平民だったか……
 それで兄は貴族高等学院にも通えなかった」

「都内で4校ある中等学校を当たったところ北校卒業生名簿に、レイウッド伯爵と同じ年齢のフェルドンの名前を見つけました。
 明日は北校に、話を聞きに行くことになっています」


 そのように、明日の段取りが決まると、ミルドレッドはお先に失礼致しますと自室に戻った。





 社交室にはジャーヴィスとイアンの、男ふたりが残っていた。


「兄貴の名前は、ヴィスが手紙に書いていた通り、やはりウィラードだったな」

 ミルドレッドが退室したので、イアンの口調は砕けていた。
 ジャーヴィスとは、ふたりだけなら伯爵様や先輩等と呼ばない仲だ。


「ウィラードの名前が、スチュワートの兄に付けられていたと言うことは、その名はアダムスでは忌み嫌われて居たわけではないし、本来なら彼が後取りで、スチュワートが一族内の何処かの家へ養子に出されるはずだったと言うことだ。
 何があって、妻と長男を実家に返したのかは、追々わかるだろう……」


 息子も住む元妻の実家が没落するのに、バーナードは救いの手を差し伸べなかった。
 離婚に際しての慰謝料もなかったと思われるので、一体メラニーはどんな理由で離縁となったのか。



「それより、イアン。
 お前、どうしてミリーを焚き付けた?」


 ジャーヴィスはグラスにブランデーを注ぎ、イアンに手渡した。
 
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