インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
これは、一体どういうことなのだろうか。父や妹からの、罠なのではないか。

「突然で驚かれましたよね。ですが、私は本気です」

諸塚さんの方を見る。優しく微笑んだ瞳の奥は、私をからかっている様子はない。
だから、余計に気持ちが悪い。この人が悪いわけじゃない。けれど、漠然と、何か嫌な予感がしていた。

「社長が専務候補に選出した三人の中から、渚紗さんが婚約者にした者を専務にするというお話はご存じですか?」
「はい、まあ、社内にいれば――」

震える声で言えば、そうですよね、と諸塚さんは苦笑いする。

「恐縮なのですが、私もその一人なのですよ。そして、婚約者になるなら、渚紗さんよりもあなたのほうが良いと私は判断した。あなただって、この会社の令嬢でいらっしゃいますから」

ふわんと微笑む彼の優しい表情に、胸がざわめく。だから、つい、言い返してしまった。

「でも、私はあなたのような方とは釣り合いません!」
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