インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「謙遜することはないよ。私はあなたがいいんだ」
「でも、私は――」
「社長や渚紗さんに何か言われたわけじゃない。この婚約は、私が望んで社長にしてもらったんだ」

優しい笑顔で見つめられ、心が揺れる。気持ちがいっぱいいっぱいになって、涙で視界がぼやけてくる。

けれど脳内では、どうやってこのお話を断ろうか必死に考えていた。私には彼は勿体ない。それだけでない。私がこの婚約を受け入れたら、妹に何を言われるか――。

『私の縁談相手を奪ったんですって? お姉様は、どれだけ私から奪えば気が済むの!』

妹が発狂する。声を上げ、使用人たちに泣きつく。私はむせび泣く妹に何もできずに、使用人たちに敵意の視線を向けられる。

そんな光景が簡単に浮かび、目の奥が熱くなった。悔しさを飲み込むように、下唇をぐっと噛む。優しく微笑まれ、婚約したいと言われてもなお、私が苦しむのは、あの日の悪魔のせいだ。
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