インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「どうか、婚約して欲しい。楓さん」

そっと差し出された右手。今度は握るでなく、差し出す。つまり、選択権は私にある。

この手を、私は取っていいのだろうか。

伸ばしかけ、引っ込め、見つめられ。
ぎゅっと目をつぶり、勇気を出して彼の手にちょこんと触れる。

すると途端に、右手は繋がれた。優しく、でも強く、全てを包み込むように、ぎゅっと。

胸が震えた。ぼやけた視界の奥の、優しい微笑みに吸い込まれた。

「私と、婚約してくれますか?」
「……はい」

こんなことをされては叶わない。私はつい、そう答えてしまった。
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